日本で古くから口紅といえば、紅花から作られる「紅(べに)」のことでした。浮世絵や時代劇の中で鏡に向かう女性が、小さな器や小皿から色をとり、唇に紅をさす光景をご覧になったことはないでしょうか。
江戸時代の文政8年(1825)、江戸日本橋小舟町に創業して以来、日本の伝統的な「紅」を当時の製法そのままに作り続けている紅屋「伊勢半本店」。江戸時代から続く紅屋が創業当時から続く紅づくりの技を伝えるために設立した「紅ミュージアム」で、「香粧品(こうしょうひん)」にフォーカスした企画展「近代香粧品なぞらえ博覧会―舶来エッセンスを使った和製洋風美のつくりかた―」が開催されています。
「香粧品」とは、香料や化粧品を総称する言葉。明治時代以降、日本の化粧品はこれまでのものから大きく方向転換しました。古来より使われてきた薫香のおしろいや紅とは違った、豊かな香気の西欧諸国の香粧品から大きな影響を受けて、研究開発に力を注ぎ向上につとめてきました。同展では、明治期から昭和初期までの国産の香粧品と、その生い立ちの元となった外国製品および関連印刷物を紹介しています。
明治時代に日本へ入ってきた外国産の香水瓶は、優美なフォルムのガラスに外国語のラベルが貼られたオシャレなデザイン。インテリア雑貨として飾っておきたくなるほどの素敵さです。可愛らしいすみれの絵柄の石鹸箱や、1900年頃の口紅のパッケージもレトロで上品なデザイン。これらの海外製品にインスパイアされた当時の日本人は、これまでにない魅力に溢れたパッケージデザインを糧に、デザイン制作の面でも進化していきました。
日本が近代化の道を歩み始めてから150年目となる今年、これまでの日本の化粧品から現代につながる近代香粧品が歩んだ発展の道のりをたどる展覧会。身近な化粧品から、日本の近代化を感じて眺めてみるのも楽しそうですよ。
紅ミュージアムでは、紅の歴史と文化、創業当時から続く紅づくりの技を展示する常設展もご覧いただけます。企画展と合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。ミュージアムの企画展サイトでは、ホームページ限定割引券もありますので、お出かけ前のチェックをお忘れなく。
近代香粧品なぞらえ博覧会―舶来エッセンスを使った和製洋風美のつくりかた―
会期:2017年10月21日(土)ー12月10日(日)
会場:伊勢半本店 紅ミュージアム [アクセス]
開館時間:10:00~18:00(11月17日(金)は20:30まで開館)※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日
観覧料:一般600円。※観覧料と引き換えに、もれなく企画展パンフレット(1部)が付きます。
株式会社伊勢半本店 紅ミュージアム<企画展> | 南青山骨董通りから紅の情報を発信